栓抜きを使ったことがない。

公開日: : 最終更新日:2018/11/13 一人飲み, 生き方と考え方

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カウンターのみの小さな店で、店主らは基本カウンターから外には出ては来ず、すべての接客を内側から行う。

だからでしょうか、そこでは独自のルールのようなものがいくつかあり、客はそれを守りながら楽しむ。

酒瓶の栓抜きはセルフ、というのもルールのひとつ。

一人で立ち寄った酒場のカウンター。中瓶の栓をシュポっと開け、小さなグラスにビールを注いでいると、隣席が揉めていました。



栓抜きを使ったことがない

え、これどうするの?使ったことないんだけど、どうしよう。

年季の入った栓抜きを握り戸惑っていたのは2人連れの若い女の子。女性、というより女の子、と表現したほうがしっくりくる出で立ちで、入店時からおいおいキミたち未成年じゃないのか大丈夫か。いや20歳の大学生ならこのくらいなのか。最近の若い人は酒を飲まないというけれど、飲む人は飲むんだな、などと勝手にあれこれ考えていました。

その先にある世界観。オフホワイトとのマリアージュを探る夜。

が、彼女らがオーダーしたのは烏龍茶。そうか、この店にはフォトジェニックなちょっと珍しいつまみがある。おかみさんもハイハイと慣れた様子でお茶オーダーを受けていたところを見るに、酒場といえども食目当ての客も多いのだろうなと納得する。

で、栓抜きですよ。

見慣れないリターナブル瓶で提供された烏龍茶を前に、お嬢さん方はあたふたしている。

新開地の貝つぼ焼きと、マスコット。

しばらくその可愛らしい様子を見守っていたのだけれど、いよいよ困ったと見えたので図々しくしゃしゃり出るおばさん力。

「大丈夫?開けようか?」
「え、いいんですか?お願いします!」

素直に栓抜きを手渡す女の子がまた可愛らしく、いい気になってしゅぽんとやる。

「わー、すごい!私の分もお願いします!」

もう1本差し出されてもちろんいいですよ、とまたしゅぽん。2人がじぃっと私の手元を見つめるので正直緊張してしまったけれど、可愛らしいお嬢さん方から感謝されるなんて身にあまる幸せ。いやあ、なんか得した気分だわ。

こんなところに、ブルーオーシャン。昔上司に言われた

「敵のいないところで踊れ」

という言葉が頭の中を駆け巡ったのでした。栓抜き一つで、それはさすがに言い過ぎか。

ダバダバダを聴いたことがない

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私が子供の頃は、小学校に上がったくらいのタイミングで栓抜きとか缶切りの練習をさせられた記憶があるけれど、今時は栓抜きを使う機会もそうそうないかもしれない。使えなくて困ることがないんだから、わざわざ練習しないだろうし、できなくてもこうしてお節介おばさんなりが現れてどうにかしてくれるし、栓抜きは生きていく上で必須のスキルでは全然ない。

って、必須のスキルなんてあるのかって話だけど。

エクセルが使えないと100歳まで生きられない。

さらに言えば、栓抜きがなくても栓は開けられる。

私が栓抜き以外の道具を使って酒瓶を開けられるようになったのは、手元に栓抜きがないけれど目の前にある瓶ビールがどうしても飲みたいという強い執念がきっかけだったのだけれど、このスキルが後年ニューヨーク旅行のテイクアウトディナー時に役立ったのは感慨深い。

エッグベネディクトブランチに熟成肉ステーキ ニューヨークで食べたもの その2。

まあ旅人たるものビクトリノックスのひとつでも常備しておけ、と言われればその通りなんだけど、あったらあったで、なければないで、ねえ。

ものがない、服もない。ないないづくしの快適さ。

栓抜きおばさんは役目を果たしたらさっと引くべし。いえいえどういたしましてと微笑んだ後は彼女らの会話に混じろうとは試みず、一人寡黙にビールを喉へ流し込むあたりがそんじょそこらのナンパ男とは違うのだよ君ィ。

店内のテレビでは、フランシス・レイ死去を伝えるニュースが流れる。

「誰?知らないおじいさん」
「ふうん、これ、有名な曲なんだって」

そうか、そうだよなあダバダバダ。いや、私だって男と女なんてリアルタイムで見ちゃいないし、なんなら愛と哀しみのボレロすらリンクしていなかった無知っぷりだし、栓抜きなしでも栓は抜けるけどシンプルなスクリューだけのコルク抜きは未だに苦手でハンドル付きのバンザイするやつばっかり使っちゃうし、あれ正式名称なんていうんだっけね。

一人酒場で飲む酒は、いつも楽しい。

 




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Comment

  1. ちゅーなー より:

    crispy様

    良い仕事をされましたね。
    「お嬢さん、それは昔ブッチャーが
    馬場を痛めつけるために使った凶器ですよ」
    こうアドバイスしたら、どう反応したんでしょうね?
    まぁ、寒い空気が出て終わりでしょうけどw

    仕事柄、個人宅に上がる訳ですが
    幼稚園児が普通に親のスマホを使ってるのを見て
    いずれ辞書もなくなるのかな?と感じます。
    ボンナイフや鉛筆削りも知らないでしょうし
    でも知らなくても困らないわけで。
    辞書を食べて覚えたなんてなくなるのかな、って。

    ダバタバダなんてムーディーにしなくとも
    スマホが告白ってくれるなら実に楽だけど
    私は辞書食べて、生身に愛してると
    言われたいし言いたいし。
    今しばらくは古く生きたいものですw

    • crispy-life より:

      ちゅーなーさん

      馬場vsブッチャーの小ネタは私としたことがすぐには思いつきませんでした。

      確かに今の幼児はスマホやらipadやらを与えたらすぐに使いこなして遊び始めるので驚きますよね。それだけ感覚的に使えるツールということなんでしょうけど。
      幼児じゃなくともデジタルネイティブ世代は告白も別れもあれもこれも、テキストやらスタンプやらで執り行うのがそこそこ普通みたいですね。たまたまそんな話を聞く機会があって驚きました。さすがにそんなことはできないけど、まだそれなりにいろんなものを使いこなせているつもりでいる我々世代。そのうちついていけなくなるんですかねえ。。。しみじみ。

      とにかく今私の脳内には「馬場に猪木に鶴田にブッチャー♪」のフレーズがリフレインしています。もちろん、全日本プロレスのテーマの節で。

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