腕を頼りに旅をする。フードトラック始めました。
公開日:
:
最終更新日:2016/02/23
音楽、映画、芸術、世界
こういう映画、好きだなあ。
ずっと観ようと思っていてそのままになっていた「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」をようやくDVDで観ました。
参考 シェフ〜三ツ星フードトラック始めました〜(Chef公式サイト)
ロサンゼルスにある一流レストランの<総料理長>カール・キャスパーは、メニューにあれこれと口出しするオーナーと対立し、突然店を辞めてしまう。次の仕事を探さなければならない時にマイアミに行った彼は、絶品のキューバサンドイッチと出逢う。その美味しさで人々に喜んでもらう為に、移動販売を始めることに。譲り受けたボロボロのフードトラックを改装し、マイアミ~ニュー・オリンズ~オースティン~ロサンゼルスまで究極のキューバサンドイッチを作り、売る旅がスタートした―。
と、あらすじを読むだけでおおよそのストーリーが把握できるシンプルな内容。
ホント、もうこれだけの話です。
サティスファクションを聴かずに帰れるか

By: Newtown grafitti
一本気な主人公がトラブルを起こし、全てを失い迷いつつも再生していく…というありがちなストーリー。そこに料理、旅、SNSなどのスパイスが加わって今時な仕上がりになっている、といったところでしょうか。
でもねえ、いいんですよ。料理の描写も、ラテンの音も。キューバサウンドといったら未だに Buena Vista Social Clubを思い出してしまうのですが、あの映画で一番強く記憶に残っているのはイブライムの奥さんが強面、ということなんですがそれもどうなんでしょうね。
さて、物語序盤に辛口グルメ評論家の来店に際しダスティン・ホフマン扮する「頭の固い」レストランオーナーと「定番メニューを出すか、斬新的な新メニューで勝負するか」で口論になるシーンがありますが、このオーナーの言ってることが結構まともなんですよね。
「ストーンズのコンサートを観に行ってサティスファクションを聴かずに納得できるか?」
という台詞はなんだか見事。
確かに、料理にしても音楽にしても定番のアレ、変わらないこと、知っているもの、を求めているファンって多い。提供者側は新しいことをやってみたくてあれこれチャレンジするけれど、受け取る側はいや、それじゃなくていつものアレがいいんだけどなあー、ってなることなんて多々あるわけで。
ライブで言うならばそのアーティストのディープなファンであれば別アレンジの演奏もウェルカムだろうけど、有名になればなるほど会場に足を運ぶファンは「浅い」リスナーが多くなる。そうなると、知ってるアレじゃないとなかなか満足しないのも仕方ないこと。「THIS IS IT」でマイケルが
「お客さんは聞きなれたレコードと同じ音が聞きたくてやって来るんだ。同じアレンジで、正確な音で再現して欲しい」
とギタリストにオーダーするシーンがあってああ、やっぱりこの人すごいなって思ったもの。
それでもキャスパーがオーナーの意見を振り切って新メニューで勝負していたらどうなっていたかはわからない。後に評論家はキャスパーのファンだからこそ彼オリジナルの味が食べたかったと告白しているけれど、あの時、あのレストランのあの状況で本来の力を発揮できたかどうかはわからない。いや、映画の話なんですけどね。
ベニエにテキサスバーベキュー、そしてキューバサンド

By: vxla
ところであれ?っと思ったのがキャスパーが豚を丸ごと仕入れた際に助手のマーティンがつぶやいた
「レチョン!」
の一言。
字幕では「豚の丸焼きだ!」と訳されていたのだけど、あれ?豚の丸焼きってアメリカでもレチョンって呼ぶの?と気になって調べてしまった。というのも、レチョンってフィリピン料理だと認識していたから。
関連 セブ島の食と物価。
調べてみると、フィリピンの他キューバやプエルトリコでも豚の丸焼き=レチョンのようで。ああ、そうか。今ではすっかりセブ島名物のように扱われているけれど、もともとはスペイン文化から広がった料理だったのね。納得。
さて、この映画を観ると三ツ星レストランのコース料理よりもカフェ・デュモンドのペニエやテキサスバーベキュー、そしてもちろんキューバサンドを食べたい欲求にかられることでしょう。そんなことはお見通し、とばかりに公式サイトではご丁寧にこのサンドイッチのレシピも掲載されています。
私も当然のようにサンドイッチが食べたくなったのだけど、このキューバサンド、ものすごく既視感があるなあ…。と考えてみたら、年末に飛行機の中で見たTLCの旅番組に出てきたそれだった。おお、思い出してすっきりした。
主人公が失職する原因となったレストランオーナーもグルメブロガーも決して彼の敵ではなく、誰一人として悪者が存在しないこの映画。
もうこれ以上ないくらいのハッピーエンド、めでたしめでたし、で幕を閉じるんだけど、このままずっと旅を続けて欲しかったな、とちょっぴり残念に思ったのは私だけでしょうか。だって旅も仕事も同時進行なんて、最高じゃないですか。なんて素敵なポータブルスキル。
まあキャスパーのように確かな技術を持つシェフが小さなフードトラックという制限の中で料理するのはもったいないか。限られた条件下でのチャレンジもストーリーとしては面白いのだけどね。
そして旅はいつか終わるからこそ旅、なのかな。
私もフードトラック引きながら旅したい。酒のつまみしか作れないし、車も運転できないけど、ってじゃあできないじゃん。
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Comment
DVD、見ました!面白かったです。お料理がらみの映画って好きなんです。中学生の時、「将来何したい?」って先生に聞かれて、「レストランがしたい」と答えたことを思いだしました。今は全く食とは関係ないことしているけれど、一度は人をハッピーにさせるような食に関わりたいなぁ、と思いました。
ご紹介ありがとうございました。
Yoshさん
いつもありがとうございます。
私も料理系の映画大好きで。しかもこれは音楽も好みだったのですごく楽しめました。
実は私も子供の頃の夢は「小さなデリを経営すること」だったんですけどね。未だ実現せずです〜。