お年玉をあげたって、面倒見てもらえるわけじゃなし。
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生き方と考え方
お年玉の平均額っていくらくらいなんだろう。
と、検索してみれば、お年玉平均額情報を記載したサイトがざくざくひっかかる。ということは、
「はて、甥っ子ももう高校生。今年はいくらくらい渡すべきなのか」
などと考えて世間の相場を知りたくなる大人たちが多いということなのでしょう。
お年玉の金額を人と比べてどうこう言うなんておかしな話だし、渡す先が多くなれば総額もかさむ。ゆえに平均値にこだわっている余裕がなくなる場合もあるでしょう。それでも知りたくなるのが人の性、か。いや、相場を知るのもひとつのマナーなのか。
話しかけられがちな人
幸か不幸か甥っ子姪っ子はおらず、親戚付き合いは極めて希薄な私お年玉を渡すような年頃の子供がまわりにいないもので、お年玉の相場を知る必要はさほどありません。
ならばなぜ、相場を。それは、人に聞かれたからです。カフェで隣に座っただけの、見知らぬご婦人に。
「パソコンで何してるのん?仕事?」
静かな昼下がりのコーヒーショップで、突然大声を上げた60代後半あたりのご婦人。店内に一瞬緊張感が走る。あ、どうしよう。なんか怒られるのかしら。と思いつつ、ええ、まあとか曖昧に相槌を打ってやり過ごそうとしたところ、
「ネットカフェ行くよりお姉さんみたいにパソコン買ったほうが安くつくかもね。ネットカフェ、結構高いもん」
と続く。
「インターネット、月々いくらかかるのん?1万円くらい?」
「いや、4~5,000円ってところですよ」
なんだ、おばさんらの世間話か。そう判断した他の客は視線を逸らして再び自分の世界へ戻る。ああ、まって、みんな。置いていかないで、と思う。前にもこんなことあったなあ、というか、こういう場面によく遭遇してやしないか。
話しかけられがちな人生を送ってきました。
これはあのパターンか。また別ジャンルなのか。などと考える私に御構いなしに、ご婦人の話は続く。
「パソコンあったらな、お年玉とかわかるん?」
は?
お年玉をあげても、面倒をみてくれるわけじゃない
ご婦人が知りたかったのは、お年玉の相場額。
なんでも今年の正月、遊びに来た遠縁の高校生になる子供にお年玉として1万円をあげたら、会いに来なかった別の親戚から
「うちの子はもらってないのに、あの子にだけ1万円も渡すなんてズルい」
という抗議の電話が入り、腹を立てているという。
あっちこっちの親戚全部に同額のお年玉を渡すとなると10万円単位の出費になるし、さほど余裕のある生活をしているわけじゃないとわかっているだろうに、それでもむしり取ろうとする親戚は酷い。しかもわざわざもらったお年玉の金額を報告するなんてイヤラシイにもほどがある。あの子らに老後の面倒を見てもらえるわけじゃないのに、なぜ私がこんな思いをしなくちゃならないのだ。
というのが彼女の言い分。
「でねえ、高校生に1万円は渡し過ぎたんかなとも思うんよ。ねえ、相場っていくらぐらいなんやろか」
これは、遠回しに、ネットでいますぐ調べろ。と、とおっしゃっているのでしょうか。かもしれない。
何が正解だったのか
年明け早々勃発したお年玉紛争。強欲な親戚に対する行き場のない苛立ち、意外に高いネットカフェ、それでも知りたい相場感。胸に渦巻く思いの丈を、誰かに聞いてもらいたくて今まさに見知らぬ女に吐き出している…のかどうかはわかりませんが。
相場を検索することもなく、曖昧な態度を取り続ける見知らぬ女(私)。ご婦人が同じ話を10回ほどループしたあたりで
「お正月は子供にとっちゃあ稼ぎ時ですから」
と適当な返事をしてみれば、ほんまや、ほんまやなあ。お姉ちゃんの言う通りやわ、あの子ら稼ぎ時やと思って必死やわ、アホらしい。となぜか満足した様子で身支度を整えはじめるご婦人。
ガハハと笑いながら去っていく後ろ姿に、お気をつけて、と声をかけながら、無事迎えたフィナーレに胸を撫でおろしたのでした。
こういう時、どう対応すればいいんだろう。
別に見知らぬ人と世間話をするくらいはどうってことないのだけれど、こういうのはまたちょっと別問題で、何が正解なのか未だわからない。ご婦人の口調はしっかりしており、話は普通に理解できたけれど、内容が果たして真実なのかはわからない。
親身に話を聞いてあげるほど出来た人間でもなく、年配の女性を邪険に扱うような真似もできない。どっちつかずな私は、今後も密な親戚付き合いをする予定はなく、お年玉の相場を調べることもないでしょう。
家族には、いろんな形がある。
酷い家族と親戚ばかりで老後が心配。そう吐き捨てたご婦人の傘やメガネケースなどの持ち物には、出先でものを無くしがちな彼女のためにご家族が書かれたであろう小さな可愛らしいメモが貼ってありました。金がかかる、憎らしい、といいつつ、それなりにいい関係の家族、というオチならばせめて。などと都合のいい妄想をする見知らぬ女であった。
ちなみに、高校生のお年玉相場は1万円程度とのこと。その場でサクッと検索してあげない心の狭い人間ですみません。
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