最底辺の仕事はできない。

公開日: : 読書

生きている限り、仕事について考え続けなければいけない、と覚悟しています。なぜなら、生涯現役を前提としたライフプランを想定しているから。

つまり、私に「老後」はない。

いかにして働かずに暮らすか。

とはいえ、今の仕事をあと10年、20年と継続できるとは思えない。おそらく職を変え、働き方も変えなければ、現役ではいられないでしょう。

自分の性格上どんな仕事でもそれなりの面白さを見出しながらやっていけるだろう。そんな謎めいた自信のようなものがあったのですが「交通誘導員ヨレヨレ日記」を読み、そう上手くはいかないかも。と考えたのでした。

最底辺の仕事はできない。

本書は

「当年73歳、本日も炎天下、朝っぱらから現場に立ちます」

なるサブタイトルが示す通り、73歳の現役交通誘導員男性がしたためた日記。といってもこの方は、もともと編集プロダクションを営んでおり「武器としての言葉の力」などの著書もあるプロの書き手です。

確かな筆力の効果はあれど、現場で起こる大小の出来事を綴った様はなるほど面白い。そして読み進めるにつれ、自分は日頃道すがらよく見かけているはずの交通誘導員や警備員という仕事について、驚くほど何も知らないのだなと実感したのでした。

さらには、私にはこの「最底辺の仕事」はできないな、とも。

「最底辺の仕事」とは、もちろん私の言い分ではなく、本書に登場する人物が自らの職業を自嘲気味に表現したもの。他に働き口がない、誰にでもできる、人に顎で使われるつまらない仕事、と認識しながら勤めている人が多いことが、このような表現につながっているのでしょうか。

確かにAI化の波が云々とは聞くけれど、まだまだ人力に頼っていることが多い交通警備は、万年人手不足。ゆえに採用ハードルは決して高くなく、年齢制限も緩い。でも、交通ルールを把握し、年数回の講習受講で新しい知識を学び、近隣住人や作業員とのトラブルを回避するコミュニケーション力も必要である…と改めて知り、私なぞはもう全然務まる気がしないのです。

炎天下で長時間の立ち仕事に耐えられる体力があったとしても、複雑な業務に頭がついていかないし、咄嗟の機転なんて利かせた試しがないし、人の生死に関わる仕事で緊張すごそうだし、何よりコミュニケーションに自信がない。

選ばなければ、仕事はある。労働人口絶賛減少中の今、確かに仕事はいくらでもあるだろうけど、自分ができるかどうかは、当然ながらまた別の問題なのですね。

ひとのことなどどうでもいいじゃないか

著書やその同僚は家族から

「70を過ぎてやる仕事ではない。近所の手前、みっともない。」

などと、警備員の仕事をたしなめられることが多々あると言います。気力体力を気遣ってのことだろうけど、実際は所属警備員の8割が70代!という会社も珍しくないらしいこの業界。いくつになっても社会と関わっていたい、とにかく働くのが好き、孫にお小遣いをあげるのが楽しみでー。そんな前向きな理由で従事する高齢者もいるのだから、著者の言う通り

「人のことなどどうでもいいじゃないか」

という自分勝手な感覚を持っていた方が何かと好都合だし、自分が勝手に決めた仕事や立場の上下についてもにょもにょ考えるのは、あまり健康的ではないな。とか言ってる自分もきっと、不健康な考え方をまだまだしているだろうな。

本当に怖い、妙な考え癖と思い込み。

思考があっちこっちに飛ぶ週末の読書となった本書。手に取ったきっかけは、こちらの記事です。

ひとり出版社だからこそヒットした究極の地味本「交通誘導員ヨレヨレ日記」

「この『交通誘導員ヨレヨレ日記』は、ひとりでやっている出版社でないと、世に出なかったかもしれません。高齢者の日記なんて地味な本、ほかの出版社では企画が通らないでしょう」

DANRO

実は本の内容そのものではなく、版元に興味を持って読んでみたのでした。

18年勤務した出版社が倒産した2ヶ月後には「ひとり出版社」を立ち上げ、この先もむやみに事業拡大などせず、永遠にひとりで出版社を続けたいと語る三五館シンシャ代表・中野氏のインタビューが、純粋に面白かった。サイトの作りもとてもよいのです。

大人一人暮らしのヒント



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