30歳過ぎたら絶望的、会えない長い日曜日。
「お酒飲めないと、人生損するよって先輩が言ってた」
ブランチがてら仕事をするために出かけた日曜のカフェで、お隣の会話が耳に入る。
話の内容から察するに、彼らはどうやら大学のサークル仲間。メンバー全員が無事20歳の誕生日を迎えたこともあり、さてこれから大人としてどうやってお酒と付き合っていくべきか、というような会話がされていたのでした。
野菜がたっぷり入った手作りサンドイッチ(旨い)を齧りながら、そっと聞き耳を立てる。
お酒なんて美味しくない
「でも、あんまり美味しいと思わないんだよね。甘いカクテルとかワインとかならなんとか飲めるけど、ビールとか焼酎って全然飲みたいと思えない」
そうでしょうそうでしょう。
アルコール解禁となり、おっかなびっくり飲み始めた20歳の感想としてこれはごく一般的なものではないでしょうか。これまで経験した「美味しさ」の範疇にあった、例えば脂身を含んだ肉汁滴るステーキとか、フルーツがたくさん乗ったケーキとか、甘くてスカッと爽快なコーラとか、そういうはっきりとした旨さとビールのそれって全く別のもの。初めて飲んでこりゃうめえ!とはなかなかならないのではないかと。
そんな他愛ないやりとりの後に出たのが冒頭の「損するよ」フレーズ。
彼らの先輩ということは、おそらく発言主もまだ大学生のはず。となればほんの1歳2歳の違いで何大人ぶってんだかという微笑ましさは感じられますが、これ、おっさんおばさんが言ったらダメなヤツですね。いい大人が前途ある若者に対してしょうもない主張すなというアレですね。
うーん、無理してでも飲めるようになったほうがいいのかなあ? 飲み会とかも増えるしさ、という流れになったところでそれまで黙っていた男の子が
「おじさんになったら、美味しく感じるようになるんだって。だから、今は無理して飲まなくてもいいかなって」
と発言しました。はい、正解。
会えない長い日曜日
飲めない、またはあまり得意でない、好きじゃない人間に対して飲酒を強要する。これ、アルコールハラスメントってやつですよね。
アルコールハラスメントチェック(アサヒビール)
この中で、1つでも当てはまったら、あなたはアルコール・ハラスメントをしている可能性あり。数が増えるほど、アルハラ度も上がっていきます。
若い人は5とか11あたりが落とし穴なのかも。
その昔は営業は飲めなきゃダメだとか、飲んでりゃ強くなるとか、接待要員として云々なんて恐ろしいことを平気で言う風潮があったけれど、飲みニケーションすら既に過去のもの。
程度問題はあれど、嫌なことはサクッと嫌と言えてしまう今の若い人はその姿勢を貫いて欲しい。付き合いで美味しくもない酒を無理して飲むよりも、今しかできないことをやったほうがいいに決まってるもの。
大体、おじさんおばさんになってからでも、酒なんて飲めなきゃ飲まないほうがいいんだってば。なーにが「損する」だ。自分の趣味嗜好が至高だとでも思ってんのか、と見知らぬ先輩に脳内説教を繰り広げる、会えない長い日曜日。
そう、この日は休肝日だったのでした。
30代、40代は絶望の時代
大急ぎで背伸びしなくても、酒なんて飲めるようになった時に飲めばいい。そのもっともすぎる意見に皆が賛同するや否や、彼らの興味は「飲めるようになる年齢」へと移行する。
「20歳になってみたら、ああ年取ったなーって思うよね。だって20年前にはもうこの世に存在してたんだよ、ヤバくない?」
「今でさえこんな感覚なのに30代、40代になったらもうその先何の可能性も残ってないんだから絶望的だよね」
すぐ目の前に40過ぎのおばさんがいても、斜向かいに50過ぎと思しきおじさんがいても、そういうことは気にせず大声で話す無邪気さが割とよい。しかしおじさんは外国人だったので、彼らの無邪気さに気付いてなさそうだったけどそれはそれとして。
年を取った時が怖いからこそ、今やれることを全力でやる。という意味であればそれはとても健康的な考え方だがしかし若者よ、心配はいらない。絶望の時代はあなたたちが想像しているよりもずっと早くに訪れるから。そして意外と絶望しないから。
酒を飲まなきゃ1日はこんなにも長くて、呆れるほど軽やか。肝機能保護の観点から推奨されている2日連続休肝日を導入するか、いっそのこときっぱり止めるのもアリだな。と、無邪気な若者の会話を聞きながら考える、会えない長い日曜日。
けれど1日が長く感じるのは、会いたい気持ちが強いからでもある。その愛すべき時間を健康的に過ごすために、守らねばならぬことが、たくさんあるね。
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