おばさん権を行使せよ。
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生き方と考え方
「姫路方面」
そう書かれたプラカードを掲げ、大荷物を背負って楽しそうに笑う大学生2人組。
「ヒッチハイクしている若者、初めて見たわ」
地元の友人が道中で遭遇した青臭い若さと眩しさについて語ってくれました。
若い時にしかできないこと
ああ、そういうことできるのは若いうちだからね、とか、この年になるといろいろ考えて身動き取れなくなるものよ、なんていう訳知り顏の大人プレイすらできずに未だ絶賛迷走中の私ではありますが、それでもほとばしる若さには羨望の眼差しを送ってしまいます。
若い頃から暗かったもので、この大学生たちのような青空リア充遊びとは無縁だった我が青春時代。ヒッチハイクもキャンプも海辺でのBBQにも参加することは叶わず、バブルの尻尾を捕まえんと同級生たちが足繁くディスコへ通うのをチラ見しながらクラブやライブハウスにひっそりと生息していたあの頃を思えば、ああ、若さ振りかざしプレイはまさしく若者だけの特権だなあと痛感する。
ヒッチハイクは果たして成功したのかしらね、などと返しつつ、
「だからこそ、我々は今おばさん権を行使すべきなのだ」
なる持論をぶち上げたのでありました。
この先は、まあまあ長い
話変わって少し前の週末。暑くて仕方ないのでビールでも飲みに行こうではないかとの誘いに乗って、銀座のビアバーへ出かけました。
とりあえず乾杯した後の話題は私の歯科通院ネタ。
前回会ったのがちょうど抜歯前で、青い顔をしてガタガタ震える私を目の当たりにしていた彼女に抜歯及び関連痛について事細かに説明するフライデーナイト。周りのテーブルを見渡せば、やけに綺麗なOLさんだらけ。そんな中、いや私もセラミックで大枚叩いたとか、将来見据えたら肌よりも歯とか目が俄然気になるわな、などという小洒落たトピックスに終始する我々はなかなかのアダルト客でありました。
「しかしさあ、考えてみれば、先はまあまあ長いのよ」
突然友人が切り出す。
「運が良ければ80くらいまで生きるじゃない。とすると、よ。まだ半分ちょいってとこまでしか来てないわけよ」
40数年も生きてきたとは言っても、最初の数年は記憶すらないし、何なら序盤の20年は自分の足で立ってもいない。自らの意思や決断や経済力やらを以って活動を始めてからが人生本番であると定義するならば、今までよりもこれからのほうが俄然長い計算になる。
「長いねえ」
「長いよ」
だからどうしたという話ではありますが、この後はお得意の高齢シェアハウス構想などを適当に話しつつ。ふたたび華やぐ店内を見渡し、
「今世はもう無理だから、来世は丸の内OL目指して頑張るわ」
などととんでもないことを口走り始めた時には、すっかり酔っ払っていた私なのでした。ああこの流れ、毎度のこと過ぎて嫌になる。
おばさん権を行使せよ
両親が会うたびにあっちがいたいこっちが痛いとのたまうので気が滅入るとか、お年寄りはすることがないからやたら病院に行くのだとか、診療やら薬の処方やらは二の次で、実は先生やら顔なじみの患者らと会話したいがために通っているのだ、なんて話も聞きますが、いざ自分が中年時代を謳歌する年齢になると、なるほどこういうことかもねと思う。
歯ガーとか、白髪ガーとか、足腰ガーなんて一見鬱陶しい話題を、私たちは今そこそこ楽しんでいる。酒のアテにする程度には笑いを織り交ぜながら楽しんでいる。
それは小学校に上がってすぐ勉強がわからないと親に愚痴ってみたり、部活がツライ、顧問が鬼、と泣いてみたり、課題が大変でと約束をキャンセルしてみたり、上司が、残業が、彼氏が、彼女がとあの頃故郷の旧友にこぼしていたように。今しかできない旬の話題として、なんだかんだで楽しんでいる。
若い人から見ればやあねおばさんってあんな話ばっかりなんだから、などとハナツマミもののネタかもしれないけれど、実はこういうのも「今しかできないこと」の一つなのかもしれないな。
なんて考えは、少々能天気すぎるか。
運が良ければあと数十年。だけどそのうち中年でいられるのはせいぜいあと十数年。バックパック背負った世界一周にもヒッチハイクにもお立ち台にも縁のなかった私だけれど、もうしばらくはおばさん権を行使して、おばさん時代を謳歌するのだ。
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