ダウンシフトは「降りる」こと?減速して自由に生きる。
読もうと思って手元に置いている本がたまり始めたので、週末はおとなしく読書。
まず読んだのはこちらです。
システムから降りて好きなことをしても大丈夫!そこには楽しい人生が開けている。経済成長を追い求める企業でストレスを抱え自分の時間もなく働く人生よりも、小さく自営し、人と交流し、やりたいことをしたい。そう考えた著者の、開業までの道のりと、開業の様々な具体的なコツと考え方、生き方を伝える。文庫化にあたり15の方法を1章分追記。
2010年に出版され、その後2014年に文庫化されたもの。私は文庫版で読みました。
ダウンシフトは「降りる」こと?減速して自由に生きる
バブル崩壊後の就職難1期生として社会人デビューし、大手小売企業にて販売職に従事していた著者の高坂氏は、会社の業績悪化による労働環境の変化をきっかけに自らの働き方に疑問を感じ退職。その後ピースボートでの世界一周など「自分探しの旅」を経て友人の店で飲食店経営の修行を積み、2004年にセルフビルドによる自身のバーを開店します。
この本にはこれらの経緯や頑張り過ぎない働き方、多くを持たずに自力で出来ることを増やしていく生き方について記されています。
途中、Tシャツとパンツのみで旅を続けるような場面もありますが、ミニマルライフや持たない暮らしに関する本というよりは、生き方、働き方に重点が置かれた一冊。以前取り上げたグーグル共同創業者のラリー・ペイジ氏とセルゲイ・ブリン氏の公開インタビューの内容にもどこか通じるものがあります。
「もう十分豊かな時代なのだから、必死に働かなくてもいいのでは」
目指すはヒマな働き方?
高坂氏は「忙しくなりずぎるのは嫌だから」と派手な宣伝など一切せずにいましたが、現在も池袋でバーを経営されています。
個人経営の小さな飲食店が東京で10年生き残るのは大変なこと。しかも、この本がきっかけで多くのメディアに彼の生き方が取り上げられ「ダウンシフターズ」に興味を持った人たちが店に殺到したことから意に反して忙しくなってしまい、儲け過ぎないポリシーを貫くために今では驚きの「週休3日」に切り替えたとのこと。
とはいえ、3日間の休みでダラダラしているわけではなく、米作りや(家族3人の米は全て自給でまかなっているとのこと)、NGO活動などで精力的に活躍されているようです。
ダウンシフトで幸せになれるのか
本書では就職や昇進、高級品を身につけることや住宅の購入など、大人として一般的とされる「システム」から降りて、自分で人生をコントロールすることの素晴らしさが描かれています。
しかし、ご本人も言われているように、誰もが働く時間や収入を減らして「ダウンシフト」する必要もないし、みんながそれで幸せになれるわけでもない。会社員でもやりがいをもって活き活きと働いている人はたくさんいるのだし、長時間働いても空いた時間を上手に使って自分のやりたいことを実現している人もいます。
本書を参考に、なまけものが単に「楽がしたい」ためにダウンシフトを選択すると少々厄介なことになるだろうなと感じます。なぜなら、彼の仕事ぶりは一見「ゆるい働き方」のようですが、意識してか否かはわかりませんが、かなり緻密な計算に基くものなので。
お金は少々でも、食べるものを始め、自分でなんでも「do」できれば、買うものが少なくても豊かに暮らせます。すると、お金は単なる物々交換手段という役割に落ち着きます。やっと、お金に支配されることから脱し、お金の上に立てたのです。お金に左右されなくなったとき、どう生きたらいいかという永久に続くと思っていた「自分探し」がいつのまにか消えていました。
お金に自分の人生が振り回されているように感じる人、いつまでたっても自分探しが終わらない人は読んでみるとヒントが見つかるかもしれません。
持たない暮らしでも生活レベルは下がらない
非常に共感できる部分も多い本でしたが、私はこのような生き方を「降りる」と表現することには少々疑問を感じます。
そんなものはただの印象でしかないのでどうでもいいかもしれませんが、多くを持たず、自分にとって必要なものだけで生活する、また、それに伴って働き方や生き方を変えることは決して暮らしのレベルを「ダウン」させるのでも、全うな生き方から「降りる」ことでもないと思うからです。
「降りる」という表現にどこか人生を諦めたような匂いを感じ取ってしまうのは私だけでしょうか。ってなんか揚げ足取りみたいですかね。言葉の文ってやつですかね。
個人的には多くを持たない暮らしでも、十分に人生「上げて」いくことができると思っています。
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