浅い関係、おかしな嫉妬。
移動してから数日間はすっきりしない天気だったけれど、今日になってようやくカラッとスカッと青空が広がりました。
大通り沿いを大股で闊歩すれば、右手にはすぐ山、左手にはすぐ海。これが我が故郷のチャームポイントだよなあと、左右を交互に眺めながらまた大股で歩く。
この街で過ごした期間はもうそろそろ人生の半分以下になろうとしているけれど、次々と居住地を変えてしまう自分が最も長く住んだ場所であることに変わりなく。
しかし私と故郷の関係性は、浅い。
故郷との関係性の希薄さ
旅で見知らぬ土地に出向いたとして、見たいもの、行きたいところがあれば、足を運びます。そこがベタベタな観光地であろうが旅行者が好んで立ち寄らないであろう面白みのないスポットであろうが、人様の判断はとりあえず脇においといて、足を運びます。それで成功することもあれば、ありゃりゃ、全然期待ハズレだわということもあり、まあだいたい旅というのはそういうものなんだろうと思う。
せっかく来たのだからと予定をみっちり詰め込んで西へ東へ動き回るのはあまり好きじゃなくて、基本的には特に目的なくふらふらするスタイルを好むので、別にわざわざそこまで行ってそんなことしなくても、みたいなことばかりしているような気もする。名もない公園でぼーっと座って過ごしたりとか、ローカルなマーケットをチェックしたりとか。
ブログで旅行記らしきものを書いているくせに、我ながらしょうもない、と思うこともしばしばであります。ガイドブック的なやり口ではなくて、あまりにも個人的な、知られるのがやや恥ずかしい類の旅をしているなと。
私はそれが好きだし、くだらないながらに楽しいし、これでいいのだと思っている節もある。同時に私好みの旅ができたと毎回大満足しているわけでもないし、同じように一見くだらないことをしていながらもするりと上手に街と懇意になってしまえる人もいて。
浅い関係、おかしな嫉妬。
長年東京で暮らしていた人が、私の故郷に移り住んだと知った時はちょっと意外でした。けれど、私がよく知っているはずの街の片隅で暮らし始めた彼が語る日々の小さな発見や驚き、少しづつ街とわかり合っていく様子を見るにつれ、なんだか心がざわざわする。
このざわざわを敢えて言葉にするならば「嫉妬」か。
暮らすにはとてもいいところだと散々人に吹聴してきたのに、実は私はこの街のことを深く知ろうともせず、ただのんべんだらりと長い年月を過ごしてきただけだったのかもしれない。明言はしていないけれど、随分大人になってから移り住んだ街にしっかり根を下ろして生きて行こうという彼の静かな決意のようなものを感じ取り、自分と故郷の関係の希薄さとの違いにおののいたり、恥じ入ったり。
嫉妬。最も蜜な関係だと思っていた親友が私よりも彼と親しくなっていた、そんな嫉妬か。いや、ほんの数ヶ月しか接していないのに親友とあっけなくわかり合えてしまう彼の懐の深さに対する嫉妬、のほうが近いかもしれません。
街との距離はコミュニケーション
暮らす場所に限らず、旅先でも同じことで、中長期滞在しても街の本質を掴めず上っ面をなぞってなんとなく去っていく私と違い、たった3日の滞在でその場所に何かを感じ、惚れ込んで、移住してしまうような瞬発力のある人もいる。
結局のところ、大切なのは「長さ」じゃなくて「深さ」なんでしょう。その場所に深く興味を持ち、手探りで開拓し、自分なりに街と良好な関係を構築していくには時間ももちろん大切だけど、深堀りできる探究心のほうが重要。
街との距離感。これも一種のコミュニケーション能力なんだろうな。
関連 私なら行かない。
今のところ、私が故郷に戻る選択をすることは、多分、ない。でも、家族がいる限りはここに来る行為は「帰省」なのだろうし、街とはよそよそしい関係性だけれど、だからといって絶縁することもありえない。
久しぶりに会って涙を流し喜んだり、ハグした後は歌って踊って一晩飲み明かすような鬱陶しく熱い友情は築き上げてこなかったけれど、道ですれ違ったら軽く右手を上げて、ヨッ、最近どうしてんの?とお互い照れ臭そうに笑い合うくらいの気恥ずかしい間柄では多分あり続ける、ような気がします。そういう相手が一人でもいるってのは、まあ、悪くはない。
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Comment
あぁ、とてもよくわかります。
私も「初デートは(今の)スマスイ(笑)」のクチでしたから、故郷との関係の浅い感じは見に覚えあり!です。
どちらかというと、うらやましがられる、バカにされない種類の故郷と見なされるのも、何となくむず痒い感じもしたりして…
私も戻ることはないだけに、お気持ちが何だか我がことのように感じました!
cocue-cocueさん
>何となくむず痒い感じもしたりして…
ありますね!いやいや、別に言うほどおしゃれシティじゃないよ?という…。
現在両親が住んでいるのは市内でも私が生まれ育った地域とは別の場所であることも関係性の希薄さを増長させているのかも。でも、小さな子供が神戸弁を話している様に帰省の度にいちいちハッとする感覚はなかなか悪くありません。関西弁は全国に溢れているけれど、〜しとう?はあまり聞きませんからね。