便利に慣れきった現代人の懐かしい痛み。
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生き方と考え方

あ?ああ…あ”あ”あ”ー!
と、漫画のような叫び声が聞こえました。
どこからって、私の口から。
予定のない週末に昼間から、なんなら朝っぱらから酒を飲んでのんびりする。これこそが人生のミッションであると疑わない私が、珍しく重ための仕事にセコセコと取り組んでいた土曜の昼下がり。
ゴールの目処がたち、「あとここまでやったら飲みに行っちゃおうかな」などとルンルンし始めた矢先の出来事でした。
「自動保存」のありがたさ。
つまり、データが吹っ飛んだのです。
最初にフリーズした時、そういや今日の作業ここまで一切保存していなかったぞ、と気づいた私。最近は専らクラウドで作業することが多く、勝手に秒で保存される環境に慣れきっていたこと、さらには普段は使わないソフトで作業していたことも、私の判断を鈍らせたのです。
こういう時、どうするんだっけか…。
「応答なし」画面をしばらく見つめてから強制終了し、再度起動すると、フリーズ前のバージョンを復元しますか?のアナウンスが表示されてホッと胸をなで下ろす。
復元後作業に戻るとまたすぐにフリーズ。やれやれ、こういうパターン久しぶりだな、なんて考えながら同じ操作をして復元を選んだところ、なぜか復元されなかったのです。昼酒を我慢してせっせと作業した数時間が、きれいさっぱり亡き者にされていたのです。
そう、一度目に修復できた時すぐに、保存しなかったばっかりに。
ここで冒頭のおかしな声がお口から漏れ出しましたとさ、おしまい。
って終われたらいいんだけど、これ、急ぎなんだわ。これ以外にもう1つさらに重たい案件があって、さっさとそっちに取り掛からないと、週末全潰れなんだわ。
おのれWindows、おのれA****!と無駄に伏字で悪態をつきながら、また一から全てを作り直す。さすがに自分の粗忽さに腹が立ってきて、あまりの天気の良さがくやしくて、途中でビール飲んでやりました。フン。
便利に慣れきった現代人の懐かしい痛み。
結局当初予定していた時間を大幅にオーバーしつつ、どうにか格好はついたので余裕ぶって言っちゃうと、なんだかものすごく懐かしい痛みでした。
その昔、まだクラウドで作業なんて選択肢がない時代は、データ吹っ飛び顔面蒼白なんて、日常茶飯事だった気がします。1日1度は社内で誰かが雄叫びをあげていたと言っても過言ではないでしょう。はいそこ、バカばっかりとか言わない。
作業中に都度保存は基本中の基本!だったのが今や、サクサク勝手に記録してくれますからね。だからこそ今私もこの文章をシステムにベタ打ちしてるわけで。いや、ほんとはテキストエディタで作ってコピペするほうがいいんだろうけども。
半世紀生きてなお続くアップデート。
便利に慣れきって、以前は当然していたことを忘れていく。
そういえば、昔職場で毎回トイレを流さないことで大クレームを引き起こした某国の男性が
「自分の生活範囲のトレイはどこも自動水洗だから、流す習慣がないんだよ」
と言い訳していたっけ。
彼だって年齢的にはデジタルネイティブならぬ自動水洗ネイティブというわけでもなかろうに、勝手に流れていくことに慣れたらレバーを倒すことすら忘れ、できたての分身を同僚にチェックされるという羞恥プレイを重ねてもなお、なかなか癖が抜けなかったんだもんなあ。人間は便利さに対してかくも順応性が高い生き物なのか。私はなんの話をしているのか。
ただでさえ週末にやりたくない類の仕事なのに、自分の判断ミスで、さらに余計な時間をかけてしまった。
あまりにアホらしく、まあまあショックな出来事だったので、「懐かしい痛み」とかなんとか言って面白がらないとやってられませんわよねえ奥さん、という話です。
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