50代で起業、異業種への転身。
そういえば、あの人は今どうしているのだろう。
ふとそんなことが頭を過って名前を検索してみれば近況がすぐわかる、そんな時代です。
さほど密ではないなりに普段からやり取りしている友人知人であればSNSのタイムラインに日々の様子が流れてくるのはもはや日常だけれど、そうでなくても現在の状況を知ることができるとは、便利なような怖いような。
いえね、10年ほど前に仕事でお世話になった年上の女性のことを突然思い出し、検索してみたんですよ。
あの人の「今」を知る

By: raneko
なんだかふとKさんのことが気にかかりGoogle先生に聞いてみて驚く。
Kさんは50代にして全くの異業種で起業していたのです。
Kさんは私がフリーになってすぐの頃に仕事でお世話になった方で、私にとって初めての大型案件のクライアント先担当者。たまたま私の仕事内容が掲載されていた雑誌を見たKさんから声をかけていただき、以降しばらくの間某社でKさんが取り仕切る部署のお手伝いをさせていただいたのでした。
関連 盛らない生き方。
この仕事、良くも悪くも今も本当に印象に残っていて。
まだ実績も何もない状態だった私がまさかこんな大企業と直で取引ができるなんて!とそれはそれは嬉しく、依頼内容も自分がまさにやりたかったこと。この仕事は経験としても実績としても後々大きなものになるぞ、と意気込んだものです。
が、その分プレッシャーも大きかった。
受注した金額も大きかったので、相手側の期待値や要求も半端なく、特に私に直接依頼をしたKさんからの突き上げはものすごいものがありました。
いや、今考えれば別にすごくはなかったのかもしれません。けれどそれまで自分がやっていた仕事とは手法もスピードもまるで違う業界に飛び込んでかなり混乱してしまったというか。
憧れの存在、怖い人

By: markus spiske
ブランドの象徴的存在であったKさんは聡明で優秀、さらには美人でおしゃれともう絵に描いたような完璧な人で、ああ世の中にはこんな人がいるのだなと自分とのあまりの違いにため息をつきながらも密かに憧れていました。
同時に、めちゃくちゃ怖かった。
優秀な分仕事に厳しかったKさんは社外の人間である私にも容赦なく、期待していた成果が上げられないと激しく叱責されることもしばしば。ずっと男社会で生きてきた私は男性の中で喧々諤々やるのには慣れっこだったけれど、年上の女性と仕事をする経験がなかったこともあり、違いに戸惑うばかり。男性のそれとはまた違う女性社会の厳しさのようなものを知ったのでした。
クライアントでありながら年齢的にもキャリア的にも上司のような存在のKさんに鍛えられながら数ヶ月間が経過した契約満了時。その会社が本国の経済状況悪化の煽りを受けて日本国内の業務を一時的に縮小することが決定したと伝えられ、契約更新には至りませんでした。
もちろん更新にならなかった理由はそれだけではなく、私の力不足でもあったのですが。
ギャラはよかったけれど、その分拘束も激しくストレスが少なくはなかった案件。残念なような、ホッとしたような、なんとも言えない気持ちになったことを覚えています。当時は勉強になった反面、自分の不甲斐なさにイライラしたり落ち込んだりもしましたが、今となってはすっかり懐かしい思い出。
時は過ぎたんだなあ。
50代で起業、異業種への転身
検索してみたのは、あの部署はまだKさんが担当されているのかしら?と考えたからでもあったのですが、まさかそんなことになっていたとは。
詳しくは書けませんが、例えていうならば誰もが知っているラグジュアリーブランドのMDとして長年活躍していた女性が寿司職人になっていた、というくらいの転身。全く違うけどこれ、我ながら秀逸な例えです。それくらいの方向転換です。
えええなんでそんなことに??と、一瞬驚きはしたのだけれど、あのKさんなら可能だな、とも。
私が知っているKさんは業界の最先端で華麗に活躍する女性だったけれど、それ以前はフリーで活動していたと聞いた記憶もあるし、今選んだ仕事も職種は違えど彼女のやりたいこと、実現したいこと、興味関心の分野としては同じライン上にあったのでしょう。確かに突拍子もない転身に見えて、筋はきっちりと通っている。
10年前に既にかなりのポジションを確立していたKさんだから、そのまま定年まで勤め上げれば安泰だったはずなのに、10代、20代から修行してその道を極める人が多いであろう職人の世界に50代から飛び込むとはなんとも天晴れ。
やるなあ、というか、ヤラレタ、という気になりました。
こういうのは誰にでもできることではないし、彼女の聡明さとか好奇心旺盛な資質があってこそではありますが、彼女のチャレンジを知ってなんだかやけに嬉しい。
短い期間だったけれど、彼女から仕事との向き合い方のようなものを含め多くのことを教わったのだから、これは大事にせねばと改めて思ったのでした。
そして、いつか彼女の寿司屋(じゃないけど)に行ってみたいなとも。いや、でも会うのちょっと恥ずかしいかな。その華麗な転身にまつわるエピソードを聞いてみたい気持ちはあるのだけど、うーん、悩む。
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