妄想で作り上げる、大人の高度なお遊び。

公開日: : 最終更新日:2018/07/06 読書, 食べること

hongkong-foods-41

文字からの情報しか得ていない食べもの。つまり、写真や映像では確認していない料理に対して、ひどく魅力を感じる。今となっては普通のこととして受け入れているこの感覚の原体験は、一体いつ、そして、なんだったっけ。

絵本だから「絵」はあったけれど、写真ではないのでぐりとぐらのカステラは入るか。あと、王さまが大の卵好きってのも記憶に残ってるなあ。

が、いやまて。何よりも鮮烈だったのはやはりバターではなかろうか。

虎が木の周りをぐるぐる回っているうちに、バターになる。虎バターで焼いたパンケーキよりも、その尋常じゃない消費枚数のインパクトよりも、バターの製造過程に強い衝撃を受けたのはなぜだろう。バターってところがまたいいんだよね。厳密にはバターじゃなくてギーだけど、この際細かいことはいいじゃないか。

文士料理入門にニヤつく

cocktail

昔の文士たちが作り、食べていた料理を、古本酒場の主人が再現する「文士料理入門」をパラパラめくって、ふふふ、やっぱりそうだよね、とうれしくなりました。中秋の名月には毎年蛸のぶつ切りに思いを馳せたり、レバーをウスターソースに漬けずにはいられなかったり、茄子のにんにく炒めが気になって仕方ないのは私だけじゃないのね、と。

そうそう、これこれ!とニヤついてしまうのは、結局のところ酒飲みのポイントを突いた料理が並んでいるからだけな気もするけれど、どこかで読んだまだ見ぬあれを体験してみたいなあと妄想する癖のある人間には、愉快な1冊。

いわしの塩焼きじゃがいも添え、和ハーブサラダ献立。

食への愛が高じて詳細なレシピ本を出している「文士」も多いので、それらを元にして忠実に再現できる料理もあるけれど、写真や映像ではなく、文字情報のみから出来上がりを連想し、さらに自分の好みも入れ込みつつ仕上げる作業というのは、単なる料理や調理とは別の面白さがある。

作品の中の料理を再現という趣向は「剣客商売庖丁ごよみ」も同じだけれど、これは作者本人監修企画だから、またちょっと別ジャンルか。あ、「マンガ食堂」も文字からではないけれど、再現系には違いないですね。ブログでも披露されている料理の再現性の高さは相変わらず怖いほど。

 

昔読んだあの本に出てきた料理のレシピが知りたい、というよりも、同じものを読んだ誰かがあの描写をどんな風に感じ、受け取り、形にするのかが、やたらと興味深い。そこがきっと再現系料理本を好む理由なんだろうな。人の頭の中にあるフィルターを覗いている感覚。

覗き、なんていうと、少々悪趣味か。

グルメガイド的な本やサイトは確かに役に立つし、それをなぞっての聖地巡礼もいいけれど、実際に自分の手で再現してみるのはより高度かつ変態的なお遊び。もちろん、狩野さんご夫妻はこれらの料理を自身のお店で振舞っておられるのだから「お遊び」ではないけれど、根本には遊びの要素が多分にあるんじゃなかろうかと推測します。そのほうが、面白いし。

 




関連記事

白鶴酒造記念館 酒蔵巡り

白鶴酒造資料館 最後は立ち呑みで〆。灘の酒蔵巡り その4.

しつこく書いている灘の酒蔵巡り、ようやく最終回です。 参考 灘の酒蔵巡り 2015

記事を読む

さばの味噌煮献立

さばの味噌煮、豆腐と三つ葉のすまし汁献立。

さばの味噌煮。ど定番の和おかずですね。しかしよくよく考えてみれば、今までここにさばの味噌煮

記事を読む

肉団子味噌ちゃんこ鍋

一人鍋で晩酌、肉団子味噌ちゃんこ鍋。

ちゃんこ鍋とはなんぞや。 相撲部屋で食される鍋、そして力士引退後の飲食店ビジネスの形態

記事を読む

年間ランキングを眺めて2014年を振り返る。

12月もそろそろ中盤戦、ということで年末っぽい話題をシェア。 Amazonの年間売上ラ

記事を読む

砂ずりのガーリックソテー

砂肝のにんにく炒め、蕪の煮浸し。

いやー、春っぽい。 出掛けに上着はいらないかな、と思ったものの帰り寒いのがイヤで結局着

記事を読む

表参道 brasserie holoholo カウンターで気軽にフレンチ。

先日は久しぶりの友人と食事に。 密談の会場に選んだのは彼女が気になっているという表参道

記事を読む

有楽町 むらからまちから館で味わうミルク感満載のソフトクリーム。

冷え性対策の記事を散々書いておきながら恐縮ですが、ソフトクリームが好きです。 どちらか

記事を読む

きつね納豆献立

きつね納豆、あさがお菜のおひたしで晩酌。

今日のメインはきつね納豆、は確定。 さて何か青菜が欲しいなあと駅前のスーパーに寄ると「あさがお

記事を読む

塩鮭と蕪の味噌煮込み

塩鮭と蕪の味噌煮込み、ちぢみほうれん草と椎茸のおひたし献立。

お得意の汁飲みです。 「汁飲み」とは、味噌汁、スープなどの汁物をアテに酒を飲むスタイル

記事を読む

蒸し鶏となすのサラダ

蒸し鶏となすのサラダ、焼きピーマン献立。

便宜上、蒸し鶏となすのサラダとしましたが、なすも蒸しています。さらに、なすとほぼ同量のトマト

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

生涯独身なんて、選ぶんじゃなかった。

恐ろしく肩が痛いので病院に行ったら、肩関節周辺炎、いわゆる「

韓国・釜山一人旅で行ったところ その2。山歩き・街歩き。

釜山一人旅散策記録の続きです。韓国・釜山一人旅で行ったところ

肩関節周囲炎(重度)発症のお知らせ。

2024年も残すところあと2ヶ月となりました。

韓国・釜山一人旅で行ったところ その1。海歩き、街歩き。

韓国・釜山一人旅記録の続きです。韓国・釜山一人旅、海のそばで

韓国・釜山一人旅、海のそばで暮らしたい。

韓国・釜山に行ってまいりました。 韓国への旅は、去年訪

→もっと見る

PAGE TOP ↑