ブログ書籍化の経緯、本当のテーマは何だ。
当ブログ、カリッとした毎日。がきっかけとなり、この度1冊の本が出来上がりました。
こういうのをブログの書籍化と呼ぶのかもしれないけれど、今回はブログ全体の内容をまとめた本ではなく、酒飲みのひとりごとを書き下ろしたもの。よって、本人の感覚としては「ブログの書籍化」ではなく「ブログきっかけで始まった別企画」のほうが近いです。
外から見ればどっちも一緒じゃないのかという感じかもしれませんが。そして書いていることと言えば毎度おなじみ晩酌ネタ、相変わらず詳細なレシピも物珍しいつまみもナシ、なのですが。
ブログ書籍化に踏み切れない理由
実は今回の企画より前にも何度か本を書きませんかというお話は頂いておりました。しかし実現には至らず。その理由は、求められている企画に応えられる気がしなかったから。というのも、以前いただいたオファーのほとんどがミニマリストネタ系の本を書きませんか?というお話だったのです。
今夜のつまみから親知らずの抜歯まで、一貫性のない話題を節操なく繰り広げているブログは場違い感半端ないなと思いつつ、未だにブログランキングに登録したままにしているのでこういう展開になるのも自然な流れ。というか、お声がけいただくこと自体は途方もなくありがたいのですが、実際に打ち合わせで企画内容を伺ってみると先方が求めている内容は
- 物を減らすコツや断捨離の効果について
- 自身の部屋やクローゼットの写真をふんだんに盛り込む
- 物のない暮らしはどのくらい節約できるか
- 以前の暮らしと今を比べて支出がどれくらい変わったのか
- リアリティを出すため、職業や年収を公表できればなおよし
などなどでした。
いやあ、それは自分には書けませんね、と。大体これまでブログで部屋の写真を公開したことも、効果的な節約術を披露したこともないのに、本ならそれができるのかという話で。
世の中には役に立つ情報満載のお片づけ系ブログが山ほどあるし、ユニクロや無印などお手頃なアイテムをおしゃれに着こなす着画満載のファッションブログだって多い。毎月の家計簿を公開しながら目標貯金額を達成するまでを綴るような実践スタイルのブログもあるので、そういう具体的な手法をまとめた実用的な本を作るなら、私よりももっと適した書き手がいると思います。と、恐縮ながら毎度お断りしていたわけです。
自分には難しいこと、ややハードル高めのチャレンジをすることには意義があると思うけど、これはそういうのともちょっと違う。無理して請けても結局どこかで見聞きしたことあるような情報を寄せ集めただけの薄い内容に終始しそうで、怖い。
そもそも書籍化を目標にしてブログを運営しているわけではないし、企画に違和感があるのなら無理せず正直にごめんなさいしておいたほうがいいかな。そう考えていたのでした。
ブログ書籍化、本当のテーマは何だ
何度かそんなやりとりがあった後。今年の春頃にセブンアンドアイ出版の書籍編集部の方からお問い合わせをいただきました。そのメールには企画内容など一切記載されておらず、ただ一度会って書籍化についてお話させてもらえませんか、とある。
銀座の珈琲店で待ち合わせ、お酒が好きだという編集担当のHさんと
「昼間の蕎麦屋でやる一杯はたまらんですね」
「ほほぅ、それは未体験ですが、楽しそうですね」
「ひとりで飲むってのもまたいいんですよ」
などというあまり生産性のない会話をしたのは3月末頃。
「crispyさんはひとりの時間を大人らしく楽しむのが得意な印象がありますけど、ひとりとか大人をテーマにするとしたら、どんな内容が書けそうですか?」
ひとり。大人。
「例えば、旅とか、ひとり暮らしそのものとか、散歩とか。あ、大人のファッションってのもいいですね」
ひとり、大人、か。
「…酒、ですかねえ」
帰宅後、あの問いの答えとして「酒」はないだろうよ。と、自分の発言を軽く悔いたものの、すでに言ってしまったものは仕方ないと開き直る。編集さんは可愛くていい人だったし、打ち合わせ楽しかったし、美味しいコーヒーご馳走になったしまあいっか。
などとやり過ごした数日後、次の会議に出す企画書を書いてみました、とHさんから送られてきた書類には
「ひとりぜいたく晩酌帖(仮)」
とありました。
あ、これは今の自分が書くテーマなのかも。見た瞬間にそう感じ、すぐにお返事し、無事企画が通りましたと連絡があったのが4月末頃。そこから詳細を詰め、7月頃から執筆作業が始まったのでした。
よって、本企画のスタート地点、そして根底にあるテーマは晩酌や料理、酒ではなく
「ひとりの時間の楽しみ方」
だったのです。
書くのは嫌いじゃなくても、辛い
って、まるでその後はサクサク進んだかのように書いてますが、実際作業に入ればそれはそれは苦しみました。
こんなブログを毎日書いているくらいだから、文章を書くのは決して嫌いではないけれど、全ページ書き下ろし作業が一気に楽しく進みました!とは口が裂けても言えません。
内容があまりにくだらな過ぎて一章丸ごとボツになったりもしたし、書いているうちに序盤と終盤で人格が豹変するという謎の憑依行為をしでかして書き直しになったりとか、何回も同じことを言い過ぎておじいちゃんさっきご飯食べたでしょ状態をたしなめられるなど、もう散々。ネタだし、執筆、校正、写真の選定、なんだかんだで時間もたっぷりかかってしまったし、イヤラシイ話、この仕事を時給換算したら2円くらいになるんじゃないだろうか。いやホントに。
ちなみに、一番時間がかかったページは最後の最後に書いたあとがきです。なんでここまできて最後の数百文字が書けないかなと自分の筆力のなさにがっかりしましたが、結果として言いたいことはまとめられた気がしています。
グダグダな師走を味わい楽しむ
自分の力不足ゆえに辛かった記憶のほうが多い今回の企画ですが、年初の予言(?)通り、ある意味本気を出せる機会に恵まれたのは幸いでした。たまにはこれくらい自分を追い込んでみるのもいいでしょう。普段あまりにものんべんだらりと生きてますからね。
苦しんだ末に一冊の本になると喜びもひとしお、と言いたいところですが、出来上がった本を見ることもなく、発売日に書店に並ぶ様子を確認することもなく、なぜか未だ南の島でセコセコ勉強している私。よって、全然実感がありません。
せっかくの機会がなんかグダグダだ。グダグダだなあと呆れるものの、こういうアホらしさもまた自分らしい。そんな気がしないでもない。
というわけでめそめそ泣きながら書いた家飲みエッセイ「ひとりぜいたく晩酌帖」発売日は明日、12月18日。部数が少ないのでお近くの書店に並ぶかどうかはわかりませんが、見かけられたら、お、あの野郎ホントに出しやがったな、と思っていただければこれ幸い。
年末にあれこれ予定を詰め込み過ぎて予想外に慌ただしい師走となってしまったけれど、辛うじて締め切りを厳守し無事発売の日を迎えられたし、なんだかんだで今年はいい1年だったとにっこり笑って納められそうです。
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Comment
crispy様
晩酌帖、無事拙宅の嫁としてお迎え致しました。
我が事のように嬉しかったのは、図々しいにも程がある。
しかしそれくらい待ち侘びて、おお!となりました。
前半3分の1程読みました、内容の事はまた改めて。
ああ、やっぱそうなのかーと感じる箇所もあり、
また更に酒を進ませてしまいますよ、マジでww
何はともあれ、書籍化おめでとうございます!
今宵の楽しみをありがとうございますm(_ _)m
ちゅーなーさん
拙著無事嫁入りしたとのことで安心いたしました。ふつつか本(?)ですがどうぞよろしくお願いいたします。
酒をテーマに書く。そう自分で言ってしまったものの、いざとなると一体何を書けばいいのかわからなくなり一文字も書けずにふて寝、を繰り返して生まれたこの本。家飲み愛好家のみなさまの飲みたい心をくすぐることができれば嬉しいなと考えております。
ここでしれっと宣伝しながらも、実は密かに緊張しておりました。早速感想をお寄せいただき感謝です!いつもありがとうございます。
届きました、「ひとりぜいたく晩酌帖」!
ちびりちびりと日本酒を飲むように、大事に読んでいます~
期待を裏切らない面白さ、です。
Yoshさん
おお、ありがとうございます! 群を抜いて小心者なもので、無事書けたはいいけど発売日を迎えるのが怖くもあったのですよ・・・。Yoshさんに楽しんでいただけているようでうれしいです。これからもどうぞよろしくお願いいたします!
Amazonさんから無事手元に本が届きまして、ホクホクした気分で読ませていただきました。
装丁の手触りとかも素敵で、紙の本で買えてよかったです。
ちゃんと届きまして嬉しかったですー!と、取り急ぎご報告まで。
くらいまーさん
早速ご報告いただきありがとうございます!
そうなんです。表紙はちょっと手触りが欲しいなあと思い、写真は帯だけに使うことにして、ちょこっといい紙にしてもらいました。楽しんでいただければ幸いです。ブログでも引き続きよろしくお願いいたします!
こんにちは
アマゾンで晩酌帖、届きました(一昨日でしたが)。読んでる最中です。
想像してたより、文章が盛り沢山で読み応えあります!
また、まだブログを全部読んでないためか、本を読んでも新鮮な感覚がします。
読み始めたところで、あまりキチンとしたコメントでなくてすみません。全部読むの楽しみにしてます。
くーさん
ありがとうございます!
なんだ、ブログの文章そのまんまじゃないか、つまらんな。となると申し訳ないし、レシピをメインに構成するような調理技術もないしで全ページ書き下ろしのエッセイという形を選んだのでした。まあ結局この選択が自分の首を締めることになったのですが、新鮮な気分でお読みいただけているとのことでホッとしました!引き続き、どうぞよろしくお願いいたします!