センスのない人に知識と経験が教えてくれること。

公開日: : 最終更新日:2016/10/22 生き方と考え方

センスがないから、は経験(=学習)する努力を怠ることへの言い訳、などと書きましたが。

関連 無印は買うな、の本当のところ。

少し前、訳あって友人と手芸関係の店に出かけました。

手芸、洋裁。
なんだか私とは最も遠い位置に存在するジャンルのような気がしますが、まあ訳がね、ありまして。

ちなみにこの友人は長年アパレル業界、しかも生産の側にいる人間で個人としても長く制作活動をしています。

不思議な人の正体は

ハンドメイドアクセサリーを制作しているであろう若い女性、舞台衣装を縫うための生地を探し求める外国人女性、赤ちゃんの何やらを作るのかしら、なママ、洋裁ひとすじ30年といった貫禄の端切れ探索マダム。ハンドメイド系は一切ダメでこの手の店にもあまり立ち寄ることがない私は普段見慣れない品々はもちろんのこと、幅広い客層にも興味津々でキョロキョロしておりました。

ハンドメイドといってもそこから生み出されるアイテムもジャンルも実にバラバラで、ああこの人はきっとアジアンテイストのグッズを作るんだろうなとかこちらはナチュラル系かしらなどと想像できるのが面白い。

けれど、そんな女性たちの中にこの人は何を探しに来たのか不明、もしかして卸業者さんですか?と思われる中年男性の姿もちらほらありました。

「うーん、さっきのところは価格は安いけど品としてはもう何年も前のどうしようもない素材も多かったなあ」

店を出てから生地の在庫と値段のバランスをつぶやく友人。そんなもんですか、と思いつつ

「お客さん見てると何を作るのかなんとなく想像できるけど、さっきのリーゼントのおじさんはなんだろうね?」

と問うてみると

「あれはロカビリー系のショップやってる人でしょう。あの人の店、絶対オリジナルの刺繍が入ったボウリングシャツとか売ってますよ」

と即答。へええ。

言われてみれば確かに納得。先ほど見かけたてかてかポマードのおじさまがそれらしき店に立っている姿を想像するとすごくしっくりくるのでした。

ロカビリーに限らず、既製品のカスタマイズやセミオーダーに対応しオリジナリティを追求することでコアなファンを掴んでいるジャンル特化の個人店は少なくないのだとか。小規模店舗はファストファッションチェーンなど大量生産の波に押され気味かと思いきや、個人でもやる人はやってるってことですね。

知識と経験が教えてくれること

この時、私たちは同じ瞬間に同じ空間で同じものを見ていました。けれど私には単に不思議なおじさんとしてしか認識できなかった人物の背景にあるものを友人は瞬時に連想できていた。いや、リーゼント氏に直接聞いたわけじゃないので友人の推測が正しいかどうかはわかりませんが、友人はこれまでの経験や知識からあの人はロカビリー系のショップをやっているっぽい、という仮説を立てることができたわけです。

これは友人と私の洞察力の違いでもありますが、それよりも知識量の差が招いた結果でしょう。洋裁や手芸にはてんで疎い私とあらゆる個人クリエイターを間近で見てきた友人。そりゃプロファイリング力に差が出るのは当然であります。

ああそうか、ある程度の知識が入った状態と空っぽの状態では例え同じ場所に立っていたとしても見えるものも感じるものも違って当然なのだな。と、当たり前のことながらも妙に納得した出来事でした。

知っている、そしてさらに実際やっているって結構すごい。

そう考えれば天才ではない多くの凡人がセンスとやらを身につけるには知識や経験の蓄積が一番の近道なのでしょう。急がば回れってヤツですね。何事も楽しめるレベルになるには相応の知識が必要で、その習得に時間がかかるのは当然のこと。逆に考えればセンスのなさは知識や経験で十分補えるのです。

なのにそれすら放棄して単にセンスがない、わからない、つまらないで切り捨ててしまうのはもったいない話だなと。

ミニマリストの持たない暮らし

センスに限らず、続けた先に見えるであろう景色を想像しながらの努力は案外楽しいものかもよ?と、怠惰な自分に言い聞かせる週末なのでした。

 




関連記事

仕事は地獄、お楽しみは全て終わった。

先日、初対面の同業の方とお話しする機会があり、自分が現在携わっている案件の状況について説明す

記事を読む

普通のことができない人がやらかさないために。

「想像を絶するだらしなさ」 と表現していたけれど、このままではいつかやらかしてしまうと

記事を読む

肩書きが欲しい、自分ではない何者かになりたい。

By: Plage Vinilos y Adhesivos[/caption]  

記事を読む

片付けられない私とファサーの心理学。

By: Ella Mullins[/caption] 最近眠れて眠れて仕方ない、のくだりで布

記事を読む

おばさんバンザイ。

By: Matthew G[/caption] 「人間ある程度の年齢になると、男性は女性化し

記事を読む

愚痴を聞くために呼び出される。

愚痴を聞いて下さい。 あまりにもあからさまなその要望に、少々面食らいました。 人

記事を読む

退屈な毎日、暇つぶしをしている暇はあるか。

年明けに開かずの段ボールを整理したと書きました。 関連 引っ越しから10年以上そのまま放置して

記事を読む

貧乏入門 あるいは幸福になるお金の使い方。

By: alamosbasement[/caption] 先日このブログを始めてから1年が経過し

記事を読む

忙しい毎日、大人のお得な現実逃避のすすめ。

国外へ転居する友人が、出発当日フライト3時間前まで必死で荷造りしていたという話を聞き、気が遠

記事を読む

場所を取るけど絶対に捨てられないもの。

By: Chris Potter[/caption] 場所を取るので捨てたいけど捨てられない

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

やりたいことリスト’24「ちゃかし倒してゲームする」

毎年恒例の儀式・その2「やりたいことリスト」のお時間がやって

2023年、買ってよかったものベスト3。

1年間の買い物を振り返る恒例行事、今年もいってみましょう。

あの世にものは、持っていけないから。

銀座で酒を飲みながら、友人の現役引退後、つまり、定年退職後の

1人で飲むなら、定食で。韓国・ソウル一人旅で食べたもの その1。

昨年11月に出かけた韓国・ソウル。思いのほか高くついた韓国旅

おねだりした矢先の、老親の入院。

自分自身の老後計画のために、老親におねだりをかました私。正月

→もっと見る

PAGE TOP ↑